【ハラーム①】お酒と豚はなぜ禁止?イスラムの食に関するハラーム解説

お酒と豚はなぜ禁止?イスラムの食に関するハラーム解説【ハラーム①】

アッサラーム アライクム(あなたに平安あれ)
こんにちは、日本人ムスリマのAyaです。

イスラムと聞くと、「豚肉がダメ」「お酒が飲めない」といった、“食”に関する厳しいルールを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

Aya

 実は、私自身も本当のイスラムに出会う前はそう思っていた一人です

ムスリムでさえ、「ハラーム」という言葉に、なんとなく息苦しい印象を持つ人もいるかもしれません。

でも、学びを深めるうちに、このイメージは180度変わりました。

イスラムにおける食のハラームは、私たちを縛り付けるためのものではなく、むしろ、私たちの心と身体を目に見えない害から守り、より清らかな人生へと導くための、神様からの温かい「セーフティーネット」だったのです。

この記事では、「ハラーム」シリーズの第1弾として、まず最も身近な「食べ物と飲み物」に関するハラームに焦点を当てます。

目次

はじめに:人生の4つの側面から見るハラームの全体像

この記事から始まる「ハラーム(禁止されていること)」シリーズでは、この神様のセーフティーネットが、私たちの人生のどのような側面を守ってくれているのかを、4つのカテゴリーで解説します。

  1. 食べ物: 心身の清浄さを保つ <今回の記事>
  2. 富と取引 公正で搾取のない社会を築く
  3. 社会倫理 人間の尊厳と調和を守る
  4. 信仰の根幹: 人生最大の目的を見失わない

なぜ豚肉やアルコールが禁じられているのか。

その理由を、クルアーンの教えと現代科学の視点から、一緒に見ていきましょう。

ハラームとハラールの言葉の意味はこちらの記事をご確認ください。

食べ物・飲み物に関するハラーム

食べ物・飲み物に関するハラーム(禁止)は、人間の身体的・精神的な清浄さを保つ、という重要な側面があると考えられています。

※ハラール(許されたもの)の食べ物についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

豚肉およびその派生物

具体例: 豚肉、ラード、ハム、ベーコン、豚由来のゼラチンなど

クルアーン(コーラン)では下記のように述べられています。

かれ(アッラー)があなたがたに,(食べることを)禁じられるものは,死肉,血,豚肉,およびアッラー以外(の名)で供えられたものである。だが故意に違反せず,また法を越えず必要に迫られた場合は罪にはならない。アッラーは寛容にして慈悲深い方であられる。
クルアーン 2章 al Baqarah 173節

豚肉がハラームであり、それを私たちムスリムが守るのは単にそれが神様からの明確な命令だからです。

Aya

その上で、なぜ神様は豚を禁じられたのか、その背後にある叡智(えいち)について、人間が科学的な視点から考察できる側面もいくつかあります

その一つが、加工肉とがんのリスクに関する研究です。

2015年、WHO(世界保健機関)の専門組織であるIARC(国際がん研究機関)は、衝撃的な発表を行いました。

ハム、ソーセージ、ベーコンなどの「加工肉」を、科学的に十分な証拠がある「グループ1:人に対して発がん性がある物質」に分類したのです。

これは、タバコの喫煙やアスベストと同じ、最も確実性の高いカテゴリーです。

この発表は、豚肉に限らず、牛肉などを含む全ての加工肉を対象としています。

しかし、現代の食生活で私たちが目にする加工肉の多くが豚肉を原料としていることは事実

これに加え、歴史的に豚肉が寄生虫のリスクをはらんでいたことや、強い雑食性(排泄物でさえ食べる)といった性質、また現在でも生食ができないのも、個人的に豚肉を避けるべきだと納得できた理由です。

1400年以上も前に下された「豚肉を食してはならない」という教え。

その理由を完全に理解することはできなくとも、現代科学がその危険性の一端を明らかにし始めた今、その導きの中に、人間には計り知れない神様の慈悲と保護の側面を感じます。

1400年以上不変のコーランについてはこちら

血液

具体例: 流れる血を直接飲んだり、血を使った料理を食べたりすること。

さっきのクルアーンと同じ章・節ですが↓

かれ(アッラー)があなたがたに,(食べることを)禁じられるものは,死肉,,豚肉,およびアッラー以外(の名)で供えられたものである。だが故意に違反せず,また法を越えず必要に迫られた場合は罪にはならない。アッラーは寛容にして慈悲深い方であられる。
クルアーン 2章 al Baqarah 173節

Aya

正直なところ、「血を飲む」という行為には、私自身は直感的に抵抗を感じてしまいます・・・

でも、世界には血をソーセージやスープなどの食材として利用する食文化も存在する。

なので、なぜイスラムでは血が禁じられているのか、豚肉と同様に、神様の命令の奥にある背景についてちょっと調べました。

科学的な視点から見ても、血液は細菌やウイルスといった病原体の温床になり得るとのこと。

また、血液は体内の老廃物を運ぶ役割も担っているらしいので、血を避けることは健康上のリスクが低い状態にすることに繋がると考えられます。

豚肉と違って、日本で生まれ育つと「血を飲めないのは悲しい」とほとんどの人が思わないと思いますが(笑)、念の為調べてみたら科学的にも避けた方が良さそうでした。

アルコールなど酩酊性のあるもの(ハムル – Khamr)

具体例: ワイン、ビールなどの酒類、麻薬など、理性を失わせる全ての物質

クルアーンにもはっきりと記載があります。

信仰する者たちよ、、賭け事、偶像、賭矢を引くことは、悪魔の行いであり、穢れに外ならない。ゆえにあなた方が成功するように、それ(ら)を避けるのだ。

クルアーン 5章 al Maidah 90節

そして、実はクルアーンには、お酒には何かしらの「多少の良さ」があるとされています。

かれらは酒と,賭矢に就いてあなたに問うであろう。言ってやるがいい。「それらは大きな罪であるが,人間のために(多少の)益もある。だがその罪は,益よりも大である。

クルアーン 2章 al Baqarah 219節 抜粋

つまりクルアーンは、益がゼロではないことを認めた上で、「害が益を上回るものは、避けるべきだ」という、非常に合理的でバランスの取れた判断基準を示しています。

アルコール・薬物など、人間の理性を失わせるものについては、逆に現代社会が許していることが不思議なくらい。

Aya

結局、お金を稼げれば人間の健康など気にしない、という現代社会の闇がここから見て取れますね。

世界保健機関(WHO)によると、アルコールや薬物使用による年間死亡者数は300万人を超えているとのこと。また、アルコールはそのうち260万人を殺しています。
たとえ神様が禁止してなくても、ムスリムかどうか関係なく摂取しないことがベストだとわかります。

これほど大きな害をもたらすものを、現代社会が許容していること。
1400年以上も前のイスラムの冷静な視点と比べると、あなたには、どちらが不思議に思えますか?

イスラムの作法に則って屠殺されなかった肉・死肉

具体例: 病死・事故死した動物の肉、アッラー以外の名(他の神々など)を唱えて屠られた肉。
ムスリムが動物を屠る際は、アッラーの名を唱える(タスミヤ)必要があります。

あなたがたに禁じられたものは,死肉,(流れる)血,豚肉,アッラー以外の名を唱え(殺され)たもの,絞め殺されたもの,打ち殺されたもの,墜死したもの,角で突き殺されたもの,野獣が食い残したもの,(ただしこの種のものでも)あなたがたがその止めを刺したものは別である。また石壇に犠牲とされたもの,籤で分配されたものである。これらは忌まわしいものである。・・(省略)・・しかし罪を犯す意図なく,飢えに迫られた者には,本当にアッラーは寛容にして慈悲深くあられる。

クルアーン 5章 al Maidah 3節

このクルアーン5章3節は、先ほどの章句よりもさらに詳しく、食べてはならない肉について述べています。

Aya

一見すると、細かくて厳しいルールのリストのように感じるかもしれませんが、結構シンプルです。

まず、「死肉」が禁じられている点。

これは非常に合理的で、病気で死んだのか、毒を食べて死んだのか、死後どれくらい時間が経っているのか分からない動物の肉を食べることは、深刻な健康リスクを伴います。

次に注目すべきは、「絞め殺されたもの、打ち殺されたもの、墜死したもの、角で突き殺されたもの」といった、具体的な死因が挙げられている点です。

これらはすべて、動物に多大な苦痛と恐怖を与える死に方です。

イスラムでは、食料として命をいただく際に、その動物への苦痛を可能な限り最小限に抑えることが強く求められます。

イスラムの屠殺方法(ザビハ)が、鋭利な刃物で素早く行うよう定められているのは、まさにこの原則を実践するためです。

この教えは、動物を単なる「モノ」としてではなく、感覚を持つ被造物として尊重する、深い慈悲の精神に基づいています。(詳しくはこちらの記事で)

そして最後に、「アッラー以外の名を唱えられたもの」や「石壇に犠牲とされたもの」の禁止。
これは、私たちの精神的な側面に関わる、最も重要な原則です。

イスラムでは食事は、単なる栄養補給ではありません。

命をいただくという行為は、その命を創造し、私たちに与えてくださった神様を意識し、感謝を捧げるべき神聖な瞬間である、とイスラムは教えます。

アッラーの名を唱えて屠殺する(タスミヤ)のは、この命をいただく「許可」を創造主から得て、その恵みに「感謝」するための、非常に重要な精神的な行為です。

まとめ:食は、身体と魂の栄養

ここまで、イスラムにおける「食」に関するハラームを見てきました。

豚肉やアルコール、血、そして正しく屠殺されなかった肉。

これらの禁止事項の一つ一つには、私たちの身体的な健康を守るための合理的な側面と、動物への慈悲、そして命を与えてくださった神様への感謝という、深い精神性が込められています。

もちろん、その真の叡智(えいち)の全てを人間が理解することはできません。

でも、それらの教えが、私たちの人生のどのような側面を守り、導こうとしているのか、ということは私たち人間の限られた知識でも見えるものがたくさんありましたね。

イスラムにとって、食べるという行為は、単なる栄養補給ではなく、私たちの身体と魂の両方を養う、神聖な営みです。

【次回予告】あなたの人生を蝕むワナ ― 社会生活のハラーム

神様が私たちに示してくださった「セーフティーネット」は、食生活だけに留まりません。

実は、私たちの日々の人間関係やお金との付き合い方の中にも、人生を危険に晒す大きな落とし穴が存在します。

利子、賭博(ギャンブル)、そして陰口など…。

次の記事では、この「経済におけるハラーム」について、詳しく掘り下げていきます。

>>【第2弾】あなたの人生を蝕むワナ ― 経済のハラーム 

最後に:守られているからこその、本当の自由

ハラームという教えは、制限された不自由さではなく、守られているからこその、本当の自由なのだと私は感じています。

もし今、あなたがイスラムに「厳しい」というイメージを持っていたとしても、その奥にある深い慈悲と合理性に、この記事を通して少しでも触れていただけていたら、とても嬉しいです。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。

この記事でお伝えした良いことは、すべてアッラー(至高にして崇高な御方)からのもの。
至らない点や間違いがあったとしたら、それは私の未熟さによるものです。

ここまで読んでくださったあなたにとって、何か一つでもプラスになることを祈っています。

Aya

アッサラーム アライクム
(あなたの上に、平安がありますように)

当ウェブサイトで扱う内容は非常に奥深く、専門家の方々が長年研究を重ねている分野です。共有している情報は、あくまでその広大な知識への入り口として、私自身の学びを元にまとめたものです。
もし内容に間違いなどお気づきの点がありましたら、コメント欄などで参考文献を添えて、優しくご指摘いただけますと幸いです。

なお、ブログ内で使用している敬称については、こちらのページで詳しく解説しています。

お酒と豚はなぜ禁止?イスラムの食に関するハラーム解説【ハラーム①】

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Aya
シドニー在住 日本人ムスリマ
学生時代の留学がきっかけで改宗。
ブログ「イスラムのとびら」では、イスラムの奥深さやムスリムのリアルな暮らしを発信しています。
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