アッサラーム アライクム(あなたに平安あれ)
こんにちは、日本人ムスリマのAyaです。
イスラムを学ぶ上で、欠かせない聖典クルアーン。
けれど、日本語訳にもいくつか選択肢があり、
「どれを選べばいいの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
Aya日本語で複数の選択肢があることに、Alhamdulillah(神様に感謝)ですね!
この記事では、3冊のクルアーン日本語訳(意訳)の特徴をまとめました。
きっと、あなたの学び方やスタイルに合う一冊が見つかるはずです。
はじめに:ムスリムによるクルアーン翻訳(意訳)
Ayaクルアーンの翻訳を選ぶ上で、私が大切にしている視点があります
それは、「ムスリム(イスラム教徒)が、信仰に基づいて翻訳したものを選ぶ」ということです。
ムスリムの翻訳者は、クルアーンを単なる文献としてではなく、人生の導きとして、日々実践しています。
そのため、信仰(イマーン)と、預言者の言行(スンナ)への深い理解が、言葉の一つ一つの選択に影響するでしょうし、また、タクワ(神様への畏怖の心)から、できる限りオリジナルのアラビア語の意味を反映させてくださっているのではないかな、と思っています。
ということで、今回は特に日本人のムスリムによって書かれた、代表的な3冊の特徴のご紹介、そして章を比較しながら、それぞれの魅力をご紹介します!
(あくまでも私の個人的な意見です。もし時間があったらノンムスリムの方が翻訳したものと比較してみても面白いかもしれませんね!)
①『聖クルアーン』(日本ムスリム協会)レビュー

- 発行元: 公益財団法人 日本ムスリム協会
- 初版: 1970年(その後、改訂を重ねています)
『聖クルアーン』(日本ムスリム協会)改訂版(第5刷)の特徴
日本のムスリムコミュニティにおいて、最も古くから、そして現在に至るまで広く読み継がれてきた、日本語訳のスタンダードとも言える一冊です。
格調高さと分かりやすさのバランスが良く、伝統的な解釈に基づいた、安心感のある注釈(タフスィール)が付されています。
アラビア語原文が右側、日本語訳が左側という、対になっているスタイルです。
(アラビア語はかなり小さめのサイズ。少し読み難いので注意)。
Aya全体的に文字は小さめで、3冊の中では最も小さいです
個人的な感想・おすすめポイント
個人的に「分かりやすい!」と感じるのが、アッラー(至高にして崇高な御方)を指す言葉(例えば「アッラー」「われ」など)が、太字になっている点です。
これは主語が一目で分かる点がとても親切だと感じます。
②『日亜対訳 クルアーン』(中田考監修)レビュー

- 監修・訳: 中田考監修 中田香織・下村佳州紀訳 訳著 松山洋平
- 初版: 2014年
『日亜対訳 クルアーン』の特徴
イスラム法学・神学の専門家である中田考先生が監修した、学術性の高い日亜対訳です。
原文アラビア語の意味やニュアンスを最優先しており、日本語として多少違和感が感じる表現も、意図的に残されています。
注釈は、権威ある注釈書「タフスィール・アル=ジャラーライン」に基づき、一つの語が持つ複数の意味や解釈の幅にも触れています。
個人的な感想・おすすめポイント
格調高い文体が特徴で、神様からの呼びかけが「あなた」ではなく「おまえ」と訳されている点には、最初は少し戸惑いましたが、読み進めるうちに、その厳粛さが神様の偉大さを強く感じさせてくれると感じています。
注釈や解説が豊富なのも、この訳書の大きな魅力です。
Ayaただ、漢字にふりがなを振っていないので、ほとんどの場合、漢字からなんとなくの意味はわかるのですが、私には読めない漢字がチラホラあります(笑)
③『やさしい和訳クルアーン』(水谷周, 杉本恭一郎)レビュー

- 著・訳: 水谷周、杉本恭一郎
- 初版: 2020年
『やさしい和訳クルアーン』第七版(水谷周, 杉本恭一郎)の特徴
その名の通り、「クルアーンに初めて触れる人や日本の若い世代」を明確なターゲットとしており、イスラムの専門用語や、難しい言葉を、徹底的に避けて書かれています。
前述のクルアーンと打って変わって、逐語訳よりも、クルアーンが伝えたいメッセージの「エッセンス」を、自然で温かい言葉で伝えることを重視した「意訳」です。
巻末に著者からの、クルアーンを読むにあたっての重要な点、またクルアーンが1番伝えたいメッセージについて収録されています。
個人的な感想・おすすめポイント
章の途中でも<アッラーの創造と知識:アーダムの物語>といった形で、その箇所のメインメッセージを要約してくれているのも、嬉しいポイント。
①でご紹介した日本ムスリム協会の訳と同様、アッラー(至高にして崇高な御方)を指す言葉は太字です。
ちなみに、文字は3つの中で1番大きいです。
Ayaあと、これは細かいところですが、色違いのしおり紐(スピン)が2本付いているのも、勉強する上では地味に便利ですね
コーランの目次の表記比較
3冊とも、アラビア語での章名の表記は本文中に登場します。
ですが、目次部分に少し特徴があったので細かいところですが比較してみました。
『聖クルアーン』(日本ムスリム協会)
日本語訳の章の名前+アラビア語音のカタカナ表記
例)開端章 [アル・ファーティハ]
『日亜対訳 クルアーン』(中田考監修)
日本語の章の名前+アラビア語
例)開端 الفاتحة
『やさしい和訳クルアーン』(水谷周, 杉本恭一郎)
日本語の章の名前+アラビア語音のローマ字表記
例)開巻章 al – Fatiha
【徹底比較】「雌牛章(アル=バカラ)」の冒頭を読み比べ!
バスマラ部分の比較
まずは、9章以外の全ての章の最初に記されている「﷽」(Bismillahir Rahmanir Raheem) =バスマラについて。
各クルアーン、どのように訳しているのか見てみましょう。
- 「慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において」
- 『日亜対訳注解 聖クルアーン』(日本ムスリム協会)
- 「慈悲あまねく慈悲深きアッラーの御名において」
- 『日亜対訳 クルアーン』(中田考 監修)
- 「慈愛あまねく、慈愛深いアッラーの御名において」
- 『やさしい和訳クルアーン』(水谷周・杉本恭一郎 訳)
※訳の中で太字になっている文字は、下線で表現しています。
また、日本ムスリム協会は漢字の上にふりがなが振ってありますが、当ブログの仕様上()書きでふりがなを記載しました。
3冊とも、少しだけですが言葉の選び方が違います。
一般的に、「アッ=ラフマーン」は、全ての被造物(信者も、そうでない人も)に向けられた、広大で、あまねく広がる慈悲。
「アッ=ラヒーム」は、特に信者に対して、来世で示される、より深く、特別な慈悲を指すと、解説されることが多いです。
Ayaこのたった一行を読むだけでも、それぞれの訳が持つ「個性」が、見え隠れしますね
2章1節(2:1)神秘への姿勢
まず、冒頭の「アリフ・ラーム・ミーム」。
各翻訳はどう扱っているのでしょうか。
3冊とも「アリフ・ラーム・ミーム」と、そのまま音写しています。
その中で、解説量に差があるので少しご紹介。
- 『日亜対訳注解 聖クルアーン』(日本ムスリム協会)
- 下部注釈にて3行の説明
- ユースフ・アリ氏の生と死、及び帰り所の神秘に関する省略語であろうという意見を「参照に値する意見」としている
- 『日亜対訳 クルアーン』(中田考 監修)
- 下部注釈にて16行の説明
- クルアーンの中の29の章について各章についてどんな文字列かの言及があり、多数説は意味のない文字列であるとしていること、また、クルアーンの奇跡性についても言及している
- 『やさしい和訳クルアーン』(水谷周・杉本恭一郎 訳)
- 下部注釈にて4行の説明
- クルアーンの中の29の章にてこのような文字列ではじまることが述べられている。意味については議論があるが、これらの解釈論では最終的には「アッラーこそご存じである」という言葉で締めくくる、という点の言及がある
この「謎の文字」へのアプローチだけでも、それぞれの本の性格が、はっきりと分かりますね!
優しさの水谷訳、バランスの協会訳、そして学術的探求の中田訳。
Ayaあなたが求める「解説の深さ」は、どれでしょうか?
2章2節(2:2)クルアーンとは何か
この一節はクルアーンが自らを定義する、非常に力強い一文です。
- それこそは、疑いの余地のない啓典である。その中には、主を畏(おそ)れる者たちへの導きがある。
- 『日亜対訳注解 聖クルアーン』(日本ムスリム協会)
- それなる啓典は、それになんの懸念もない、畏れ身を守る者たちへの導きである。
- 『日亜対訳 クルアーン』(中田考 監修)
- この啓典(クルアーン)には全く疑わしいものはなく、(アッラーを)意識する人(信者)たちにとっての導きです。
- 『やさしい和訳クルアーン』(水谷周・杉本恭一郎 訳)

特徴が大きく出てきたね
多くの人が聞き馴染みがあるのは日本ムスリム協会の訳でしょう。
いずれの訳でも共通しているのは、「主を畏れる者たち」「畏れ身を守る者たち」「(アッラーを)意識する人たち」のところに注釈が入り、追加の解説があることです。
この「神様を畏れる」「神様を意識する」というのはタクワ(Taqwa)というイスラムの重要なポイントで、ラマダンの真の目的となります。
詳しくはこちらのラマダンの記事で解説しているのでぜひ合わせてお読みください。
2章3節(2:3)導かれる人の条件(行動として現れる信仰)
では、このクルアーンは、どんな人のための導きなのでしょうか。
- 主を畏(おそ)れる者たちとは、幽玄界を信じ、礼拝の務めを守り、またわれが授けたものを施す者、
- 『日亜対訳注解 聖クルアーン』(日本ムスリム協会)
- (それらは)隠されたものを信じ、礼拝を遵守し、われが糧として与えたものから(善に)費やすものたち。
- 『日亜対訳 クルアーン』(中田考 監修)
- (信者は)目に見えないもの(アッラー、天使、復活、天命など)を信じ、礼拝を行い、われらが与えたものから施す人たち、
- 『やさしい和訳クルアーン』(水谷周・杉本恭一郎 訳)
「目に見えないもの(アッラー、天使、復活、天命など)」(水谷訳)は、究極に分かりやすいですね。
「幽玄界」(協会訳)は、少し哲学的で未知な響き。
そして「隠されたもの」(中田訳)は、原文のアラビア語「ガイブ」が持つ「(人間から)隠されている」というニュアンスを、最も忠実に表現しようとする、学術的な誠実さを感じます。
2章4節(2:4)導かれる人の条件(信仰の中身)
- またわれがあなた(ムハンマド)に啓示したもの、また以前(の預言者たち)に啓示したものを信じ、また来世を固く信じる者たちである。
- 『日亜対訳注解 聖クルアーン』(日本ムスリム協会)
- そして(それらは)おまえに下されたものとお前以前に下されたものを信ずる者たちであり、そして来世を彼らは確信する。
- 『日亜対訳 クルアーン』(中田考 監修)
- あなた(ムハンマド)に啓示されたものと、あなた以前に啓示されたものを信じ、そして来世のあることを確信する人たちです。
- 『やさしい和訳クルアーン』(水谷周・杉本恭一郎 訳)
啓示や来世についても、原文の構造を重視する訳と、意味が自然に伝わるよう補足する訳とで、表現のトーンに明確な差が生まれていますね。
3節・4節で挙げられている信仰と実践は、ムスリムの信仰と行動の土台であり、私たちが「六信五行」と呼ぶものに近い内容です。
六信五行(ムスリムが信じることと実践)についてはこちらの記事で詳しくお話ししています。
2章5節(2:5)神様による結論・約束
- これらの者は、主から導かれたものであり、また至上(しじょう)の幸福を成就(じょうじゅ)するものである。
- 『日亜対訳注解 聖クルアーン』(日本ムスリム協会)
- それらの者は彼らの主からの導きの上にあり、それらの者こそ成功者である
- 『日亜対訳 クルアーン』(中田考 監修)
- かれらは主に導かれた人たちで、(究極の)成功者です。
- 『やさしい和訳クルアーン』(水谷周・杉本恭一郎 訳)
「幸福として描くか」「成功として断言するか」「意味を補って伝えるか」それぞれの翻訳姿勢がはっきり表れています。
アル=バカラ章の冒頭5節を通して読むことで、クルアーンが「何を信じ、どう生きる人を、どこへ導くのか」
そして、その導きを日本語でどう伝えようとしているのかが、それぞれ違うアプローチで伝えているのが印象的です。
【まとめ】あなたの「今」に合うのはどのクルアーン意訳?(価格・特徴)
3冊の日本語訳は、どれも魅力的ですが、あなたが重視するのは「読みやすさ」でしょうか、それと「学問的正確さ」でしょうか。
自分の今の学び方や興味に合わせて、一冊を手に取ってみるのがおすすめです!
| 書籍名 | 価格の目安 | 特徴 |
|---|
| 日亜対訳注解 聖クルアーン(日本ムスリム協会) | 約3,000円 | 日本のムスリムコミュニティで長く読み継がれるスタンダード。格調高く、バランスの良い注釈付き。漢字にふりがなあり。 |
| 日亜対訳 クルアーン(中田考監修) | 約5,250円 | 学術性が高く、原文の意味を忠実に再現。詳細な注釈付きで、クルアーンを深く学びたい方向け。漢字のふりがななし。 |
| やさしい和訳クルアーン(水谷周・杉本恭一郎) | 約3,300円 | 専門用語を避け、クルアーンのメッセージをやさしい日本語で伝える入門書。読みやすく、太字やしおり紐など実用面も配慮。 |
※値段は2026年2月現在のネットで調べた情報となります。
オンラインで無料でクルアーンを読めるサイトもあります。
詳しくは下記の記事をチェックください。
Aya日本語でクルアーンを学べる選択肢があることに、改めてAlhamdulillahですね

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
この記事でお伝えした良いことは、すべてアッラー(至高にして崇高な御方)からのもの。
至らない点や間違いがあったとしたら、それは私の未熟さによるものです。
ここまで読んでくださったあなたにとって、何か一つでもプラスになることを祈っています。
Ayaアッサラーム アライクム
(あなたの上に、平安がありますように)
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