アッサラーム アライクム(あなたに平安あれ)
こんにちは、日本人ムスリマのAyaです。
これまで、食、富と取引、そして社会倫理におけるハラーム(禁止)が、いかに私たちの身体や社会を守るための、神様の温かい「セーフティーネット」であるかを見てきました。
>> 第1弾:食 / 第2弾:富と取引 / 第3弾:社会倫理
今回は、ハラーム解説最終回!
- イスラムにおける「これだけは絶対に許されない」とする、最も重大な罪とは?
- 神聖なルールは、一体誰が、どのように決めているのか?
この2つの問いに答えることで、イスラム信仰のまさに核心に迫ります。
Aya早速一緒に見ていきましょう
イスラム最大の罪「シルク(Shirk)」とは?
まず、イスラム最大の罪、それは「シルク(Shirk)」と呼ばれます。
これを一言で言うなら、「唯一であるべき神アッラー以外に、神にふさわしい権利や属性を、何か別のものに与えてしまうこと」です。
具体例:
- アッラー以外の神々や、偶像を崇拝すること
- 太陽や星、あるいは特定の人間(聖人など)に、祈りを捧げること
- 自分の運命を、占い師や星占い、お守りといったものに頼ること
クルアーン(コーラン)は、このシルクという罪について、非常に厳格な言葉でこう述べています。
本当にアッラーは,(何ものをも)かれに配すること(シルク)を許されない。それ以外のことに就いては,御心に適う者を許される。アッラーに(何ものかを)配する者は,まさに大罪を犯す者である。
他のどんな罪も、神様は心から悔い改めれば許してくださる可能性がありますが、シルクだけは、悔い改めないまま死んでしまえば、決して許されることがない、とされているのです。
なお、ここで注意したいのはこれはイスラムの正しい教えを知っていたにも関わらず、悔い改めずに亡くなってしまった場合のことです。
イスラムの正しい教えを知らずに亡くなった方は、最後の審判で別のテストがあるとされています。
なぜシルク(Shirk)が最大の罪なのか?

「人を殺す方が、よっぽど悪いことじゃないの?」と思うかもしれません。
でも、イスラムの視点から見ると、シルクが最も重い罪であることには深い理由があります。
ちょっと考えてみましょう。
私たちに命を与え、毎秒心臓を止まらず動かしてくださっている、そして呼吸する空気と、飲む水と、家族や友達をを与えてくださったのは、誰でしょうか?
イスラムでは、それは唯一の神アッラー(至高にして崇高な御方)であると教えます。
その計り知れない恩恵の全てを受けながら、私たちの感謝や祈り、賛美といった「崇拝」を、全く権利のない他の何か(人間、石、星、はたまた自分自身の欲望)に捧げてしまう。
殺人や窃盗は、「人間同士」の間での不正です。

だからこそ、クルアーンは、この罪を犯したまま死ぬことだけは決して赦されない、と厳しく警告しているんだね
日常に隠れたシルク(Hidden Shirk)
「でも、私たちは偶像なんて拝まないし、関係ないかな…」
そう思った方もいるかもしれません。
でも、シルクには、私たちの日常生活の中に、気づかないうちに忍び寄る「隠れたシルク」とも呼べるものがあります。
それは、神様よりも、何か別のものを、自分の心の「最優先事項」にしてしまうことです。
- お金や地位への崇拝: 神様に喜ばれることよりも、お金を稼ぐことや、社会的成功を人生の最終目的にしてしまう
- 他人の評価への隷属: 神様が自分をどう見ているかよりも、SNSの「いいね」の数や、周りの人々からの評価ばかりを気にして、一喜一憂してしまう
- 人間関係における依存:神様よりも子どもや、パートナー、または友人・アイドルなどに依存してしまう
わかりやすい例で言うと、親が子どもを神様以上に優先してしまって、礼拝やその他の信仰行為を怠ったとき、親が子どもを思う気持ちは紛れもなく重要ですが、神様以上に心の中心にあると、隠れたシルクになる可能性だってあるんです!

人間は「何かを崇拝せずにはいられない」― どちらの隷属を選びますか?
イスラムでは、人間はそもそも「何かを崇拝せずにはいられない存在」であり、必ず『何かの奴隷』になると教えられています。
奴隷というと怖い響きですが、何かを心の中心に置くことだと考えるとわかりやすいと思います。
例えば、モノ・こと・人は有限ですよね、いつかなくなってしまったり、裏切ることだってあります。
そんな時、心の中心に神様以外を置いていたら、大きく傷つくのは私たちです。
唯一完全な創造主(アッラー)の、尊厳ある奴隷(しもべ)になるか。
それとも、お金や評価、人間関係といった、不完全で消えてしまう・また裏切られるものの、惨めな奴隷になるか。
どちらが、本当の「自由」と「心の平安」をもたらすでしょうか?
シルクを禁じる教えは、私たちを縛るためではありません。
Ayaむしろ、私たちをあらゆる「見えざる偶像」の奴隷状態から解放するための、神様からの最も慈悲深い導きだと感じます

神のルール(ハラーム)は、どう決まる?― イスラムの知的な誠実さ
さて、ハラームシリーズを終える前に、1つ重要なポイントをご紹介します。
このシリーズで見てきた「ハラーム」というルールは、一体誰が、どのように決めているのか。
きっとすでに想像がついていらっしゃると思いますが、もちろんそれはアッラー(至高にして崇高な御方)です。
クルアーンでも、人間が勝手にハラール(許されている)ハラーム(禁止)を決めてはいけないと記載があります。
あなたがたの口をついて出る偽りで,「これは合法〔ハラール〕だ,またこれは禁忌〔ハラーム〕です。」と言ってはならない。それはアッラーに対し偽りを造る者である。アッラーに対し偽りを造る者は,決して栄えないであろう。
クルアーン 16章 an Nahl 116節
根拠・方法 Quran / Sunnah / Ijma / Qiyas
アッラー(至高にして崇高な御方)の言葉であるクルアーンがハラームの根拠になることは明確ですが、現代社会では、以前は存在しなかった問題など、新しいルールが必要になることもあります。
そんな時にはどう対処するのか?そもそもどんなルールで決まるのか?
その判断の根拠となるのが、以下の4つ。
- クルアーン(神の言葉): 全ての基本となる、絶対的な「憲法」です。
- スンナ(預言者の言行): その憲法を、預言者が人生の中でどのように実践したかを示す、今でいう「最高裁の判例集」のようなもの。
- イジュマー(法学者の合意): 偉大な学者たちが、ある問題について全員一致で出した「確定判決」
- キヤース(類推): 新しい問題(例:電子タバコ)に対し、クルアーンやスンナにある似たケース(例:タバコ)から、その根本原因(例:健康への害)を類推して判断を導き出す、法的な推論。

ファトワ(Fatwa)とは?
これらの膨大な知識を何十年もかけて研究した専門家(ムフティー)が、私たち一般人からの新しい質問に対し、この4つの根拠に基づいて導き出した専門的な見解が「ファトワー(fatwa)」です。
拘束力はなく「助言・指針」の位置づけになります。
ここで注意したいのは、彼らは決して「新しいルールを作っている」のではないということ。
神がすでに示された道しるべの中から、「このケースにおける神様のご意図は、おそらくこちらでしょう」と、最大限の知識と誠実さをもって、答えを探し出してくれていると言うわけです。
Ayaこの知的な誠実さこそが、イスラムの教えが1400年間、その本質を失わずに続いてきた理由の一つかと思います
結論:ハラームの先にある、本当の自由
計4回にわたって、「ハラーム」というテーマの旅にお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
食、富、社会、そして信仰。
このシリーズで見てきた数々のルールは、一見すると、私たちの人生を縛るように見えたかもしれません。
でも、その一つ一つの意味を見てきた今、少しでもそのイメージが和らいで、願わくばそのネガティブなイメージがなくなっていたら嬉しいです。
私にとってハラームとは、神様が私たちのために、人生という道の両脇に引いてくださった、「崖の手前のガードレール」のようなものです。
そのガードレールがあるからこそ、私たちは道を踏み外す不安なく、広大に広がる「ハラール(許されたもの)」の世界を、安心して、心から楽しむことができる。
Aya制限された不自由さではなく、守られているからこそ、与えられる、本当の意味での「自由」と「心の平安」だと感じます
イスラムは、誰かや何かを盲信する宗教ではありません。
自分で学び、感じ、そして実践していく中で、少しずつ神様との個人的な関係を深めていく、とてもパーソナルな旅です。
このハラームシリーズが、あなたの旅を、そっと後押しするような存在になれたなら幸いです。
これまでのハラーム解説
ハラール解説
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
この記事でお伝えした良いことは、すべてアッラー(至高にして崇高な御方)からのもの。
至らない点や間違いがあったとしたら、それは私の未熟さによるものです。
ここまで読んでくださったあなたにとって、何か一つでもプラスになることを祈っています。
Ayaアッサラーム アライクム
(あなたの上に、平安がありますように)
当ウェブサイトで扱う内容は非常に奥深く、専門家の方々が長年研究を重ねている分野です。共有している情報は、あくまでその広大な知識への入り口として、私自身の学びを元にまとめたものです。
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なお、ブログ内で使用している敬称については、こちらのページで詳しく解説しています。


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