アッサラーム アライクム(あなたに平安あれ)
こんにちは、日本人ムスリマのAyaです。
「偉大な発明家」と聞いて、誰を思い浮かべますか?
レオナルド・ダ・ヴィンチ、ガリレオ、ニュートン…?
もし、彼らが成し遂げた偉業の遥か昔に、その礎となる発見や発明が、イスラム世界で、ムスリムの学者たちによって、次々と生まれていたとしたら、驚きませんか?
Aya隠されていたと言っても過言ではない、イスラム黄金時代について一緒にみていきましょう!
イスラム黄金時代とは?
イスラム黄金時代とは、イスラム世界が文化・科学・経済など様々な分野で発展した8世紀から13世紀頃の時代を指します。

500年!かなり長い期間だね
特にアッバース朝時代(750年 – 1258年)がその中心。
バグダードを中心に学術や文化が栄えました。
この時代には、ギリシャ・ローマの古典文献の翻訳、天文学、医学、数学、哲学などの分野で大きな進歩があったんです。
Ayaさっそくイスラム黄金時代に発展したことを詳しくみていきましょう
医学・衛生
抜糸不要の手術や、すべての人に開かれた無料の総合病院。
これらがいつ生まれたと思いますか?
実はヨーロッパのルネサンスより何世紀も早く、中世イスラム世界ではすでに近代医療の礎が築かれていました。
外科手術と近代医療の父 アル・ザフラウィ (Al-Zahrawi)
約1500ページに及ぶ外科事典『外科の書』を著したアル=ザフラウィ。
また、彼は猫の腸から作った吸収性の糸を初めて外科手術に用い、抜糸が不要な縫合を実現しています。
その他にも、史上初とされる帝王切開の記録や、今も使われているような注射器、針、鉗子(かんし)など、数多くの手術器具を発明したのも彼だったのです。

ヨーロッパ医学の教科書 イブン・シーナー (Ibn Sina)
11世紀に彼が執筆した『医学典範』は、人体の詳細な記述、薬学、感染症の概念、人道的な医療倫理まで網羅し、約600年間ヨーロッパの大学で必読の教科書であり続けました。
また、独自の発見としては、新たな薬草、アルコールを使った腐敗の防止、脳腫瘍と胃潰瘍の発見なども挙げられます。
Ayaメンタルヘルスって最近急に発展したイメージがあったけど、イスラム黄金時代にすでに認知されていたなんて!
病院制度 アハメド・イブン・トゥルン (Ahmed ibn Tulun)
872年、エジプトに設立されたアハマド・イブン・トゥルン病院。
これは史上初の総合病院とされています。
看護師、専門病棟や教育機関を備え、イスラムの慈善精神に基づき全ての人(人種・宗教など関係なし)に無料で治療を提供していました。

1100年以上も前にすでに病院があったこと、そして無料で誰でも受け入れていたなんて、今よりも素晴らしい…!
Aya私たちが普段お世話になっている病院システムはムスリムが作ったものだったなんて、全く知らなかったよ
歯ブラシ(Miswak) 預言者ムハンマド(彼に平安と祝福あれ)
預言者ムハンマド(彼に平安と祝福あれ)は、ミスワークという木の枝を使った歯磨きを奨励し、口腔衛生の習慣を普及させました。
このミスワークは歯をきれいにするだけでなく、息を爽やかにすることもできます。
その成分は現代の歯磨き粉にも利用されているんですよ!
なお、ミスワークを使うことはイスラム教ではスンナ(推奨される習慣)とされています。
Ayaこんな木の枝だよ
イスラム教関連のものを置いているお店で手に入ります

高度医療や病院などはルネサンス以降のヨーロッパで始まったと思われがちだけど…
- 外科手術、医学書、などムスリムが作成したものが他国の言葉にも翻訳され、半世紀以上にわたってヨーロッパでは教科書として使われていた
- イスラム世界では科学的で人道的な医療システムが9世紀にすでに確立されていた
数学
今や私たちの生活に欠かせない『アルゴリズム』。
この言葉が、実は9世紀に生きた一人の数学者の名前に由来することをご存知でしたか?
Aya最近の言葉だと思ってた、恥ずかしい…
アルゴリズムと代数学の父 アル・フワーリズミ (al-Khwarizmi)
スマホやAIに不可欠な「アルゴリズム」という言葉。
実はこれ、9世紀に活躍したイスラムの天才数学者アル・フワーリズミ、彼の名前が語源です。
さらに、彼が書いた世界初の「数学の教科書」のタイトルから、「代数学(Algebra)」という言葉も生まれました。
学生の頃に習った「方程式」や「x, y」といった文字を使った計算、そう、あれが「代数学(Algebra)」。
なんと、わたしたちは知らず知らずのうちに偉大なムスリムの学者が発見したことを学んでいたんですね!

近代科学の父と呼ばれるガリレオやニュートンが登場する800年も前に最も重要な「土台」となる数学の考え方がイスラム世界で既に完成されていた!
物理学・光学
「物が見える」仕組み、光が屈折して目に入ってきて・・・と理科や物理で習ったの、覚えていますか?
実はかつて、アリストテレスやプラトンでさえ、「目から光線が出て、物に当たることで見える」と考えていました。
この千年以上続いた常識を覆し、ニュートンより700年も前に「光は外から目に入ってくるのだ」と証明し、カメラの原型を発明した人物がイスラム世界にいました。

びっくりすぎる!
光学の父 イブン・アル=ハイサム (Ibn al-Haytham)
「物が見えるのは、目から光が出ているからだ」
古代ギリシャから信じられてきたこの説を覆し「物体から反射した光が目に入ることで物が見える」という、現代では常識の視覚の仕組みを初めて科学的に証明したのが、光学の父イブン・アル=ハイサムです。
彼の功績はそれだけにとどまりません。
著書『光学の書』の中で、虫眼鏡などに使われる凸レンズの原理を初めて記述し、後のヨーロッパでラテン語に翻訳され、眼鏡の発明に繋がりました。
さらに、後のカメラや望遠鏡の原型となる「カメラ・オブスクラ」も発明しています。
しかし、彼の最大の功績は、科学そのもののあり方を変えたことです。それまで哲学的な思索の一部だった物理学を、「仮説を立て、実験によって証明する」という現代と同じ科学へと転換させたのです。
Aya彼がいなければ、写真や映画の歴史はもっと遅れていたかも?

光学の父はニュートンだと思われがちですが
- その基礎は700年も前にイスラム世界で確立されていた
- 現代にまで続く科学の基本姿勢、「仮説を立て、実験によって証明する」科学的方法の礎を築いた
工学・技術
ここまで、実は〇〇年前にイスラム世界ですでに…
ということばっかりで、そろそろお腹いっぱいになっているかもしれませんが、まだまだありますよ〜!
人類初の飛行実験は、ライト兄弟の1000年も前に行われていたことをご存知ですか?
現代エンジンの基幹技術や自動人形(ロボット)まで、多くが中世イスラム世界で生まれていたというんです。
Aya早速見ていきましょう
ロボット工学の父 アル・ジャザリー (Al-Jazari)
ロボット工学の父 アル・ジャザリーは、現代のエンジンに不可欠なクランクシャフト(回転運動と直線運動を変換する機構)を発明しました。
精巧な水時計や、自動で給仕をする人形(オートマタ)など、50以上の発明を行い、その設計図は後の機械工学に多大な影響を与えています。

世界初の飛行士 アッバース・イブン・フィルナス (Abbas Ibn Firnas)
875年、鳥のような翼を付けて滑空し10分間の飛行に成功したのは、ライト兄弟ではなく、アッバース・イブン・フィルナスでした。
ライト兄弟は動力を使っての飛行に初めて成功したので、もちろん彼らの功績は言うまでもありません!
Ayaただ、翼の揚力と風を利用して飛ぶ「グライダー」「パラシュート」の原型を875年にすでに試していたことが驚きですよね
なお、彼はの好奇心から行っていたわけではなく、科学的な観察に基づいて飛行を試みた偉大な発明家です。
- 現代のエンジンを動かす基幹技術が、産業革命より遥か昔に発明されていた
- ライト兄弟が空を飛ぶ1000年も前に、大空への挑戦をした人物がイスラム世界にいた
天文学
大航海時代、ヨーロッパはようやく地球の大きさを測ろうと苦心していました。
では、その400年以上も前に、地球の半径をほぼ正確に計算し、生活に活かしていた文明がありました。
そうです、それはイスラム黄金時代。
地球の大きさを計算 天文学者アル・ビールーニー(Al-Biruni)
コロンブスよりずっと前の11世紀、天文学者アル・ビールーニーは、三角法を用いて地球の半径をほぼ誤差なく計算していました。
当時のイスラム世界では地球が球体であることは常識であり、天文台では礼拝の方角や時刻を正確に知るために、現代のGPSのように科学が実生活に応用されていました。

史上初の正確な世界地図 アル・イドリースィー(Al-Idrisi)
イドリースィーは12世紀に世界地図を編纂しました。

大航海時代(15〜16世紀)にやっと地球が球体だと一般的にも知れ渡ったヨーロッパですが、イスラム世界ではその400年以上前から地球の大きさが正確に把握され、科学が生活インフラとして機能していました。
化学
私たちの生活に欠かせない様々な化学製品。
その製造に欠かせない「蒸留」や「ろ過」といった技術は8世紀のイスラム世界でスタートしました。
近代化学の父 ジャービル・イブン・ハイヤーン (Jabir ibn Hayyan)
彼が「化学の父」と呼ばれる理由は、現代の化学でも使われる基本的なプロセスを、世界で初めて体系化した人物だからです。
彼が確立した技術には、蒸留、精製、結晶化、ろ過といった、理科の実験でもおなじみの手法も含まれています。
さらに、強力な酸である硫酸や硝酸を発見し、化学史上最も重要な発明品の一つである蒸留器「アランビック」を開発します。
このアランビックの発明は、その後の世界に絶大な影響を与えました。
彼の技術は、美しい香りを抽出する香水の製造や、後のウイスキーやブランデーといった蒸留酒の製造技術へと直接つながっていったのです。(アルコールはイスラムではハラーム(禁止)ですが。)

私たちがヨーロッパで発展したと思いがちな香水や蒸留酒の製造技術、「化学」そのもののルーツは、実は1200年以上も前のイスラム世界にありました
文化・社会・その他
毎朝飲むコーヒー、世界の大学制度、ハンドソープ、そして銀行の小切手。
これらもすべて中世イスラム世界の文化から生まれたんです。
世界初の大学 ファーティマ・アル=フィフリー(女性)
ギネス世界記録やユネスコが「世界で最も古くから継続して運営されている学位授与可能な大学」として認定しているのは、モロッコのフェズにあるカラウィーン大学。
そして、この大学は西暦859年に、ファーティマ・アル=フィフリーという敬虔なムスリム女性によって設立されました。

知恵の館 国家規模の翻訳・研究機関
9世紀のアッバース朝の首都バグダッドに設立された、国家的な学術研究機関「知恵の館」。
ここでは、ギリシャ、ペルシャ、インドなど世界中の文献が組織的にアラビア語へ翻訳され、イスラム黄金時代の知的基盤を築きました。
コーヒー
9世紀のイエメンで、イスラム神秘主義者(スーフィー)が夜間の修行のために飲み始めたのが起源。
その後イスラム世界全体に広まり、16世紀にヨーロッパへ伝わりました。

コーヒーってイタリアのイメージあるけど、起源はイエメンだったんだね

金融制度 手形・紙幣
イスラム黄金時代には、現代の「チェック(check)」の語源であるサック(sakk)という手形や、紙幣を使用していました。
広大なイスラム世界で、遠隔地の商人同士が現金を直接送ることなく安全に取引を行うための、信用状や手形のようなものだったようです。
ハードソープの発明 アル=ラズィー(al-Razi)
心地よい香りの固形石鹸は、イスラム黄金時代に中東で生産され、石鹸作りが確立した産業となりました。
石鹸の製法はアル・ラーズィー(865年頃~925年)によって記述されており、彼はオリーブオイルからグリセリンを製造する方法も記しています。
シリアでは、オリーブオイルとアルカリ、そして石灰を使って石鹸が作られていました(特にシリアのアレッポが有名)。
石鹸はシリアからイスラム世界の他の地域やヨーロッパに輸出されました。

なぜ、これほどのイノベーションが生まれたのか?
これにはイスラムの教えが深く関わっています。
なぜなら
イスラム教では「学ぶこと=義務」だから。
学問に対する重要性が1400年以上前にすでに認知されていたのです。
詳しくはこちらの記事へ
隠された歴史? なぜ私たちは知らないのか
イスラム=野蛮な宗教、イスラムって遅れている、と思われることがまだ多い現代。
でも、昔は全くの逆だったんですね。
でも、私たちがこのような歴史をほとんど知らないのはなんででしょうか?
ヨーロッパが主役の「歴史」
私たちが学ぶ世界の歴史はヨーロッパ・アメリカを主人公として描かれています。
古代ギリシャ・ローマに始まり、ルネサンスで「再生」し、科学革命で近代を築いた…という物語です。
そのため、その功績は「ギリシャの知識を翻訳しただけ」といった脇役として、意図的に小さく扱われてきたのではないでしょうか。
また、近現代において、メディアや政治によって作られた「イスラム=テロ、劣っている」というイメージは、もしかすると華々しいイスラム文明を知っていて、その力を恐れてのことかもしれませんね。
現代システムとの「価値観の対立」
それだけではありません。
イスラムの教えには、現代のグローバル資本主義のあり方に根本的な疑問を投げかける側面があります。
酒・タバコ・ポルノなどの巨大産業や、世間一般の娯楽、音楽やいわゆるエンタメの多くも、イスラム教では人間に害があるものとされています。
そして、その代表が利子(リバ)の禁止です。
利子で富を増やすことを基本とする現代の金融システムと真っ向からイスラムは対立します。
現代はお金持ちがよりお金持ちになり、貧乏な人はずっと貧乏でいるような搾取の仕組みで成り立っているといっていいでしょう。
イスラムはこのような状態を良しとしません。
こうした多くの「世界を支配している」国や人たちとの価値観の対立もまた、イスラム文明が持つ知恵や功績が光を浴びない理由の大きな要素なのではないか、と個人的に思っています。
おわりに:隠された歴史を知る意義
長い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。
医学から天文学、そして私たちが日々使う「アルゴリズム」に至るまで、私たちはイスラム黄金時代が生み出した、数々の驚くべきイノベーションに日々お世話になっていたことがわかりましたね。
私たちが学校で習った歴史は間違いではないかもしれない、でも「偏ったものしか習っていない」ということを記事作成にあたって改めて実感しました。
ヨーロッパが「暗黒時代」と呼ばれたまさにその時、イスラム世界では科学と文化が頂点を極めていて、それがルネサンスや科学革命に大きく影響を与えていました。
正しいことを知ることは、異なる文化を持つ私たちが、互いの偉大な功績に敬意を払い、共に未来を築いていくための、最初のステップになるはず。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
この記事でお伝えした良いことは、すべてアッラー(至高にして崇高な御方)からのもの。
至らない点や間違いがあったとしたら、それは私の未熟さによるものです。
ここまで読んでくださったあなたにとって、何か一つでもプラスになることを祈っています。
Ayaアッサラーム アライクム
(あなたの上に、平安がありますように)
当ウェブサイトで扱う内容は非常に奥深く、専門家の方々が長年研究を重ねている分野です。共有している情報は、あくまでその広大な知識への入り口として、私自身の学びを元にまとめたものです。
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