アッサラーム アライクム(あなたに平安あれ)
こんにちは、日本人ムスリマのAyaです。
以前こちらの記事で、私たちの不安を安心に変えてくれる「タワックル(アッラーに全てを委ねる)」についてお話ししました。
今回は、イスラーム暦の最後を飾る12番目の月、ズル・ヒッジャ(巡礼月)の最初の10日間について。
「自分にできる最善を尽くし、あとは神様にお任せする」。このタワックル心の在り方を、実際の行動として深めるための「1年で最も神聖な時間」がやってきます。
なぜこの期間が、人生のターニングポイントになるのか。
「ズル・ヒッジャ」とは?

ズル・ヒッジャ(Dhul Hijjah)は、イスラーム暦の12番目の月、つまり「1年の締めくくり」の月です。
アラビア語で「巡礼の所有者」という意味を持ちます。
この月は、「4つの神聖な月」の1つ。(ムハッラム – 1月、ラジャブ – 7月、ズル カアダ – 11月、そしてズル ヒッジャ – 12月)
これらの月は、古くから争い事が禁じられ、自分自身の行いを厳しく律するべき神聖な期間とされています。
イスラームの五行の集大成である「ハッジ(巡礼)」が行われる月です。
(六信五行についてはこちらの記事で)

私たちは普段の暦の12月といえば、一年の締めくくり、そして来年の準備を考えますよね。
ズル・ヒッジャも似たような位置付けとなります。
1年で最も神聖な「ズル・ヒッジャ最初の10日間」とその理由

ズル・ヒッジャ月の中でも、特に最初の10日間は格別の重要性を持っています。
預言者ムハンマド(彼に平安と祝福あれ)は、この期間の価値についてこう言われました。
「これら(ズル・ヒッジャの最初の10日間)に行われる善行よりも優れたものは、他のどの日にもない。」
すると、仲間たち(サハーバ)が尋ねました。
「アッラーの道における奮闘(ジハード)であってもでしょうか?」預言者(彼に平安と祝福あれ)は答えられました。
「ジハードであってもだ。ただし、自らの命と財産をかけて(戦いに)出かけ、そのどちらも持って帰らなかった者(殉教した者)だけは例外である。」
ズル・ヒッジャの最初の10日間が、なぜこれほどまでに特別なのか。
その理由は、大きく3つにまとめることができます。
Aya早速、理由を1つづつ見ていきましょう!
理由① イスラムのすべてが凝縮される期間
この10日間が特別とされる最大の理由は、「イスラームの五行(信仰の柱)がすべて集結するから」と言われています。
Aya1年を振り返ってみると、信仰告白、礼拝、喜捨、断食は他の月でもできますね
でも、そこに「ハッジ(巡礼)」が加わるのは、1年の中でこの10日間のみ。
六信五行についてはこちらの記事もご覧ください。
理由② クルアーンで誓われた「10の夜」

アッラー(至高にして崇高な御方)はクルアーン第89章(暁章)の冒頭で、「暁(あかつき)にかけて。10の夜にかけて」と誓いを立てられています。
創造主であるアッラー(至高にして崇高な御方)が何かの対象にかけて誓われるとき、それはその対象が、人間が想像する以上に重く、神聖なものであることを示しています。
理由③ 信仰を深める「3つの大きな節目」ハッジ・アラファ・イード
Ayaこの短期間に、実はイスラムにおけるとても大切な行事が3つも詰まっています。
① ハッジ(巡礼)
世界中からムスリムがサウジアラビアのマッカ(メッカ)に集まり、白い布二枚(イフラーム)に身を包みます。
地位も名誉も捨て、ただアッラーだけに頼る「タワックル」を体で表現する巡礼です。
巡礼に行けない人たちも、心の中の執着を捨て、アッラー(至高にして崇高な御方)に向き合う精神を共有します。
② アラファの日(9日目):慈悲
10日間の中で最も重要な日です。(1年で最も重要な日とも)
預言者ムハンマド(彼に平安と祝福あれ)の言葉に「ハッジ(巡礼)とはアラファである」という言葉があるほど、この日は巡礼の核心です。数百万人の巡礼者たちがアラファにて、アッラーに許しを請います。
一部の伝承ではかつてアダムとイヴ(ハワー)が地上で再会を果たした場所とも言われます。
そして、預言者ムハンマド(彼に平安と祝福あれ)が、イスラームの完成を告げるクルアーンの一節(5:3)を伝えたとされる歴史的な場所でもあります。
この日、アッラー(至高にして崇高な御方)は慈悲を地上に最も多く注がれると伝えられています。
Aya巡礼に行けない私たちにとっても、この日は最大のチャンスです。

③ イード・アル・アドハー(10日目):犠牲祭
このズル・ヒッジャ月10日間の締めくくりが、世界中のムスリムが祝う「イード・アル・アドハー(犠牲祭)」です。
(ちなみに、イスラムで年に2回イード(お祝い)の日があります。1つ目はラマダンの後。詳しくはこちらの記事で解説しています。)
このお祭りの中心にあるのは、預言者イブラヒーム(彼に平安あれ)の物語です。彼は、長年待ち望んでいた息子をアッラー(至高にして崇高な御方)のために犠牲にせよ、という想像を絶する試練を与えられました。
彼がすべてをアッラーに委ね(タワックルし)、一歩を踏み出したとき、アッラーは彼の息子の身代わりに一頭の羊を遣わされました。
この日、都心部に住んでいる人は、家畜を屠殺して貧しい人々へ配る代わりに募金などを通じて「犠牲の代行(Qurbani)」を行います。(金銭的に可能な人は行うというスンナ)
このように、ズル・ヒッジャの最初の10日間は、 信仰の本質がすべて凝縮された、1年で最も祝福された時間です。 私たちが行う小さな善行でさえ、想像を超える価値を持つのはそのためです。

おまけ:ラマダンの最後の10日間とズル・ヒッジャの最初10日間
よく「ラマダーンの最後10日間とどちらが大事なの?」という疑問を耳にします。
イスラムの教えではもちろんどちらも大事なのですが、学者の中には下記のような棲み分けを指示している人も多くいます。
- ラマダンの最後10日間: 1年で最も神聖な「夜」が含まれる
- ズル・ヒッジャの最初10日間: 1年で最も神聖な「昼」
私たちが起きている1分1秒、そのすべての行動が、1年で最も価値あるものとしてカウントされる。そんな驚くべき恩恵が一日中続いているのがズル・ヒッジャと言えるかと思います。
想像を超える報酬と、同時に知っておくべき「重み」

報酬の大きさ
この期間の報酬は、大きく分けて「10日間ずっと続く報酬」と「9日目だけのスペシャルギフト」の二段構えになっています。
①10日間全体の報酬(1日目〜10日目)
この期間中に行うすべての善行(礼拝、寄付、ディクル、親切など)は、アッラー(至高にして崇高な御方)の慈悲によってその価値が最大化されます。
- 善行の増幅: クルアーンには、善行の報酬は700倍、あるいはそれ以上に増やされるという一般原則が示されています(2:261)。1年で最もアッラーに愛されるこの10日間は、その「増幅」がさらに特別なものになると信じられています。
- 1日の断食が1年分に: 最初の9日間のうちどの日に断食を行っても、ハディースの解釈として「1日の断食が1年分に相当する」という学者もいます。
②9日目(アラファの日)だけのスペシャルギフト
10日間の中でも、9日目のアラファの日は別格のボーナス・デーです。
- 2年分の罪のリセット: 9日目に断食をすることで、「過ぎ去った1年と、これから来る1年」の計2年分の罪が消し去られると約束されています。これは他の日にはない、アラファの日だけの驚異的なギフトです。
罪の重さも倍増する(警告)
「自分はできている」と他人を見下したり、悪い習慣を止めようとしないことは、せっかくの善行を台無しにしてしまいます。
【実践】ズル・ヒッジャの10日間をどう過ごすか(To-Doリスト)

ここまでなぜズル・ヒッジャが重要なのかということをお話ししてきましたが、大切なのは実践です!
Ayaすぐに取り入れられることばかりなので、目標を決めて一緒に頑張りましょう!
さあ、準備が整ったら、10日間の具体的な過ごし方を見ていきましょう!
① 五感のジハード(自分との戦い)
「穴の空いたバケツ」にならないために、自分自身を管理しましょう!
- 舌を守る: 悪口、噂話、不平不満、嘘を断つ。
- 目を守る:不適切なものから目をそらす。
- 耳を守る:噂話を聞かない、不適切な音楽を聞かない。
- 時間を無駄にしない: SNSは要注意。できればSNS断食したいですね!
- 人間関係を守る:家族・友人・隣人、争いを避け良い関係を
② 生活の中で実践すべき「3つのズィクル」

預言者(彼に平安と祝福あれ)はこの10日間、特に以下の3つのズィクル(アッラーを念じる言葉)をたくさん唱えるよう推奨されました。
これらは、私たちの心の優先順位を整える強力なツールです。
- タフリール(Tahleel): 「ラー・イラーハ・イッラッラー(アッラーの他に神なし)」
→ 自分のエゴや執着を捨て、アッラーだけを心の中心に置く宣言です。 - タクビール(Takbeer): 「アッラー・アクバル(アッラーは至大なり)」
→ 自分の悩みも、世の中の困難も、すべてはアッラーの偉大さに比べればちっぽけだと再確認します。 - タハミード(Tahmeed): 「アルハムドゥリッラー(アッラーにこそ全称賛あれ)」
→ 1年を振り返り、与えられたすべての恵みに感謝を捧げます。
③ アラファの日(9日目)への集中
- 断食: 2年分のリセットのために、最初の9日間全部が難しくてもこの1日だけは行いましょう。
※もし生理や体調不良で断食ができない場合も、落ち込まないでください。断食ができなくても、ズィクルやドゥアー、寄付をすることで、アラファの日の恩恵をたっぷり受け取ることができます。神様はあなたの心(意図)をちゃんと見てくださっています。
- Dua(祈り)リスト:自分の欠点、捨てたい習慣、家族の幸せ、世界平和、、、。
特に午後のAsrからMaghrib前の時間は、アッラーが慈悲を最も多く注がれる時間帯と伝えられています。あらかじめ祈りたい内容をメモしておき、心を込めて祈りましょう。 - 有給を取る: 可能であれば仕事を休み、神様に向き合いましょう。
もちろん難しい方も多いはず。そんな時は「意図(ニーヤ)」を大切に。家族を養うために仕事に励むことも、アッラーを意識して行えば立派な信仰(イバアダ)になります。
④「サクリファイス(犠牲)」を日常に落とし込む
10日目の犠牲祭(イード)に向けて、私たちは「犠牲」の本質を理解する必要があります。
そもそも犠牲とは単に動物を捧げることではなく、「神様への愛のために、自分の執着を手放すこと」です。
- 睡眠を捧げる: 礼拝やクルアーンの朗誦のために、睡眠の心地よさを手放す。
- 悪い習慣を捧げる: 依存しているSNS、怒り、嘘、怠惰をアッラーのために断ち切る。
- エゴを捧げる: 自分のプライドや傲慢さを捨てて、謙虚になる。
- 富を捧げる: 自分のための消費を抑え、寄付や犠牲の代行(Qurbani)のために差し出す。
Aya全て一気にできなくても、できることからチャレンジしたいですね
⑤ イード・アル・アドハー(10日目)の実践

いよいよ10日間の締めくくり、祝祭の日です。預言者ムハンマド(彼に平安と祝福あれ)は、「アッラーの御前で最も偉大な日は、この犠牲の日(イード当日)である」と仰いました。
金銭的に余裕がある人にとって、家畜を捧げることは非常に強く推奨されるスンナです。日本では支援団体などを通じた「代行募金」が一般的です。
【準備】犠牲(クルバン)を予定している方へ
犠牲(クルバン)を捧げる予定があるなら、知っておくべき特別なルールがあります。
ズル・ヒッジャ月に入る前までに、爪切りや散髪を済ませておくことをおすすめします!
イード当日の過ごし方
巡礼に行けなくても、日本で私たちにできる美しいスンナがたくさんあります。
- グスル(全身洗浄)をして身を清める: 特別な日のために、体も心もリセットします。
- 最高の服を着て、最高の香りをまとう: お祝いの日なので自分にとって一番良い服装で出かけましょう。
- イードの礼拝に参列する: モスクや会場に集まり、コミュニティのみんなと礼拝をします。
おまけ:特別なタクビール
特に9日目の夜明けから13日の午後までは、以下の特別なタクビールを唱えるのがスンナです。
モスクへの道中や、礼拝の後、家事の合間などに、メロディに乗せて唱えてみてください。
「アッラー・アクバル、アッラー・アクバル、ラー・イラーハ・イッラッラー、ワッラー・アクバル、アッラー・アクバル、ワ・リッラーヒル・ハムド」
(意味:アッラーは至大なり、アッラーは至大なり。アッラーの他に神なし。アッラーは至大なり、アッラーは至大なり。すべての称賛はアッラーに。)
チャンスを逃さずズル・ヒッジャの10日間を走りきろう!

アッラーに全てを委ねる(タワックル)者にとっては、かれ(アッラー)は万全である。
ズル・ヒッジャの最初の10日間は、1年の終わりに自分の「エゴ」「悪い習慣」「富」をアッラーに捧げることで、過去の自分を脱ぎ捨て、最高の新年を迎えるための期間です。
たとえこれまでの1年が理想通りでなかったとしても、あるいはラマダンで思うように頑張れなかったとしても、落ち込む必要はありません。
私たちが本気で自分を捧げようと一歩踏み出せば、神様は必ず万全な助けを差し伸べてくださいます。
この「1年で最も報酬が大きい10日間」で、心のリセットを行いましょう。
アッラー(至高にして崇高な御方)が私たちの善行を受け入れ、最高の祝福を与えてくださいますように。
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
この記事でお伝えした良いことは、すべてアッラー(至高にして崇高な御方)からのもの。
至らない点や間違いがあったとしたら、それは私の未熟さによるものです。
ここまで読んでくださったあなたにとって、何か一つでもプラスになることを祈っています。
Ayaアッサラーム アライクム
(あなたの上に、平安がありますように)
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